1.  シャンプーの基礎知識

(1)  シャンプー剤とは 

シャンプー剤は頭皮毛髪の汚れを落として清潔にし、頭皮毛髪の健康を保つ目的で使われる洗浄剤です。薬事法で規定されていて化粧品として扱われますが、一部医薬部外品のものもあります。   販売されているシャンプー剤は薬事法で認定されていますので、使えないような害のでるものはないのです。正しい使い方をすれば問題はありません。

 

 シャンプー剤には多くの種類があり、使う場合はシャンプー剤の良し悪しではなく、対象になる頭皮、毛髪の性質や状態や使用目的に応じたシャンプー剤を選ぶことが大切です。

 

(2) シャンプー剤の洗浄作用・メカニズム

  洗浄作用・メカニズム

 シャンプー剤の洗浄作用は界面活性剤の働きによる。界面とは2つのこと異なる物質(2つの混じり合わない物質)の境界面のことで、頭皮、毛髪と汚れ、水と汚れの界面で分離作用をもつアニオン界面活性剤が働いて汚れを落とすのがシャンプー剤の洗浄作用である。

  汚れには水で洗い流すと落ちるチリやホコリがあるが、水だけでは落ちない油性の汚れもあります。それに対しては界面活性剤のはたらきが必要です。洗浄剤のアニオン界面活性剤は水になじむ親水基と油になじむ親油基を持ち、親油基の部分が汚れに吸着し、汚れと毛髪の間に入り込んで毛髪から汚れを引きはがして、その汚れを包み込みます。汚れの表面は親水基になるので水に溶け、すすぐとシャンプー剤とともに流れ落ちるのです。これが洗浄のメカニズムです。

  汚れの種類  

シャンプー剤は頭皮、毛髪の汚れを落とすために使われますが、汚れの種類によってシャンプー剤を選定する必要があります。そのため汚れの状態を観察することが大切です。そしてそれぞれの汚れに応じた洗浄力のシャンプー剤を使うことです。

 

l  頭皮の内部から分泌されるものの汚れ

  皮膚表面から剥がれる角質片に皮脂や汗などの分泌物が混じり汚れになる。剥がれ落ちるべき角質片も皮膚の表面に付着していると表皮細胞の正常な分化が阻害される。また、分泌された皮脂は時間が経つと酸化脂質になり、毛孔を塞ぎ皮膚への刺激物になる。汗も放置すれば刺激物になる。

l  外部から付着する汚れ 

外界からのチリやほこり、微生物などが頭皮の表面の分泌物と混じり合い汚れとなる。

l  頭皮、毛髪に使用される香粧品などの汚れ

頭皮に使われるヘアーローション、育毛剤など、毛髪に使われる整髪料なども汚れになる。特に整髪料の中には洗浄しにくいものがあり、注意をしないと残留するおそれがある。

 

3)良いシャンプー剤の条件

    同じ洗浄でも物を洗う場合は対象のものを傷めない限りは洗浄力の強いほうが求められます。ところがシャンプーは洗浄の対象が頭皮頭髪のために汚れを落とせば良いのではなく頭皮毛髪の健康を守り、悪い影響を与えないことが必須の条件です。

良いシャンプー剤の条件を上げると

      頭皮と毛髪から過度に脂分を取らない適度な洗浄力があること。

   頭皮や目などに対する刺激が少なく安全性があること。

   クリーミーな持続性のある泡が立つこと。

   洗浄中の摩擦による頭皮と毛髪の損傷を防ぐ潤滑性があること。

   洗浄後、頭皮には適度な保湿を与え、髪には自然なツヤと柔軟性を与えること。

 その他には色や香りの好み、容器のデザイン、価格などの個人的な条件もあります。

2. シャンプー剤の成分

   基本的な成分は3つに分けられます。
   シャンプー剤の主剤である洗浄成分(界面活性剤)コンデショニング剤、その他の添加剤(品質保剤)です。

洗浄成分 

1)アニオン界面活性剤(陰イオン界面活性剤) よごれの洗浄

   石鹸系  

l  アルカリ石鹸系  オレイン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪カリウム

²  原料に脂肪酸Naを使った石けんの事。

²  pHが高く、洗浄力・泡立ちに優れている。

l  酸性石鹸系  ラウレス酢酸ナトリウム

²  アルカリ石けん系より、きめの細かい泡立ちに改良され刺激も弱く洗い心地がさっぱりしたタイプ。

   高級アルコール系    

ラウリル硫酸ナトリウム                            

ラウレス硫酸ナトリウム

   αーオレフィン系          

オレフィン( C14-16 )スルフォン酸ナトリウム

         アルキルスルホン酸Na

² 洗浄力と起泡力に優れている。
植物由来を綴った商品に配合される場合が多く、高級アルコール系より比較的に髪や皮膚への刺激が少ない成分。

   アミノ酸系

天然素材を原料とし、皮膚や髪に刺激が少ない高価な成分。PHにより起泡力が左右され洗浄力が弱い為、皮膚や眼粘膜にやさしくコンディショニング゙効果が得られる。

l  グルタミン酸系    

      ココイルグルタミン酸ナトリウム

ラウロイルグルタミン酸ナトリウム

l アラニン系

ラウロイルメチルアラニンナトリウム    

ココイルメチルアラニンナトリウム

l グリシン系(サルコシン)

        ラウロイルサルコシンナトリウム 

ココイルサルコシンナトリウム

                                                                                       

   タウリン系    

ココイルメチルタウリンナトリウム

                ラウロイルメチルタウリンナトリウム

     スルホコハク酸        

スルホコハク酸ラウレス2ナトリウム

2)両性界面活性剤     洗浄とコンデショニング

   ベタイン系        ラウラミドプロピルベタイン

                              コカミドプロピルベタイン

 

3)非イオン界面活性剤      

洗浄基剤のはたらきを助け、洗浄力を アップしたり、泡立ちを良くする。

コンデショ二ング剤     シャンプー後の仕上がりをよくする

 

       陽イオン界面活性剤    静電気の発生を防ぐ

   油脂             油分を補い、しっとりとした仕上がりにする

   ポリペプチド           しっとりなめらかに仕上げる

 ④   シリコーン誘導体  毛髪表面に薄い膜をつくり、サラサラした仕上がりにする

   カチオンポリマー        高分子が髪に吸着して補強する

   添加剤           品質の保持

ハイドロトープ剤        溶解度を高め、凍結を防止し、温度差による品質の変化を防ぐ

   安定剤、防腐剤   細菌やカビの繁殖を抑え、変質や腐敗を防ぐ

 ⑨   酸化防止剤             酸化による変質を防ぐ

 ⑩   紫外線吸収剤          紫外線による変質を防ぐ

 ⑪   pH調整剤        シャンプー剤のphを目的に合わせて調整する

    金属イオン封鎖剤  水中のミネラル分による性能の低下を防ぎ、変質を防ぐ

    乳濁剤              クリーミーな質感をつくる

    増粘剤              粘着度を調整する

    香料・着色剤        香り、色を目的に応じて調整する

 ⑯   フケ防止剤     微生物の繁殖を防ぐ、かゆみ止め、フケの除去

3. シャンプー剤の選び方

シャンプーに使うシャンプー剤の性格を理解して使う人に合ったものを選ぶのが原則です。

シャンプー剤を選ぶにはシャンプー剤の良し悪しではなく対象となる頭皮と髪の状態にあったものを選ぶことが必要です。

1)洗う対象の頭皮と毛髪ではまず頭皮に合わせること

2)頭皮は4つに分けることができる。

   ノーマル

        普通のシャンプー剤でよい。高級アルコール系のもので良い。

   オイリー

皮脂の分泌が多い場合は洗浄力の強いもので良い。石けん系のものがよい。

   ドライ

乾燥しやすい場合は洗浄力の弱いものが良い。弱酸性やアミノ酸系がおすすめ。

   トラブル

トラブルの状態にもよるが低刺激のものがよい。天然アミノ酸系や専門の薬用シャンプー剤がよい。

 

頭皮の場合は頭皮の性質にもよりますが、シャンプーするときの頭皮の状態が一番重要です。年令、性別、季節などによっても違うので慎重に観察することが必要です。

 

3)頭皮に問題ない場合には髪の状態に合わせる

   ノーマル

          普通のシャンプー剤でよい

   オイリー      

          洗浄力が強いものがよい

   ドライ

          洗浄力が弱く、保湿効果の高いものがよい

   損傷毛

      弱酸性の天然アミノ酸系のシャンプー剤がよい

シャンプー剤の選び方チャート

洗う対象の頭皮と毛髪ではまず頭皮に合わせること

 



 シャンプー剤の選定は成分の中でも洗浄力、刺激性に影響する洗浄主剤の界面活性剤の種類によって選ぶこと。

l  洗浄主剤のタンパク変性、アレルギー性、洗浄力、刺激性への影響を調べること。

 

4機能別に分類した場合のシャンプー剤の種類

   洗い上がり感の向上を目的としたもの

   毛髪の損傷を防ぐもの

   頭皮、毛髪に対して低刺激なもの

   フケやカユミを防ぐ効果の高いもの

   トリートメント効果の高いもの

   その他、特殊な目的があるもの

 

5)機能別の種類

   汎用タイプ    (洗浄を目的にしたもの)

l  透明、クリーム状シャンプー

コンデショニングタイプ   (洗い上がり向上を目的としたもの)

l  コンデショニングシャンプー

l  オイルシャンプー

l  プロテインシャンプー

l  細い髪用、硬い髪用シャンプー

薬用タイプ   (フケ、カユミ、消臭など薬効を目的としたもの)

l  フケ用シャンプー

l  殺菌シャンプー

l  消臭シャンプー

l  育毛シャンプー

l  アトピー用シャンプー

l  かゆみ止めシャンプー

スペシャルタイプ   (個別の目的持ったもの)

l  アロマシャンプー

l  ベビー用シャンプー

l  ドライシャンプー

 

 

4.  シャンプー剤の表示成分のチェックの方法

 

シャンプー剤は薬事法により使用している内容成分を全部表示しています。その成分をチェックすればどんなシャンプー剤かわかります。シャンプー剤は内容を理解して使うことが必要です。

 

シャンプー剤は容器の裏のラベルに全成分が表示されています。その表示の仕方は配合の1%以上の成分は配合量の多い順に記載し、1%以下の成分は順不同でアバウトな記載でよいと薬事法で決まっています。

実際には全成分の7080%と一番量の多い水が最初に記載されています。

次に洗浄成分と洗浄補助成分(2030%)の順に並びます。

その後に、うるおい成分やダメージの補修成分などのコンデショニング剤と品質保持剤  が多い順に記載され、最後に1%以下の添加物が並びます。

 

全成分表示は化粧品登録商品で、医薬部外品は指定成分のみの表示です。例えば、メリットシャンプーは医薬部外品のため全成分は表示されていません。

成分をチェックするのはシャンプー剤の性格を決める洗浄成分と洗浄補助成分に何が使われているのか、の部分です。

 

 現在販売されているシャンプー剤は薬事法で許可されているもので、洗浄することだけは正しいシャンプーの方法で行なえば問題はありません。

しかし、頭皮の健康を保持するためのヘアケア、スキャルプケアからみると髪のプロとして本当に安心して毎日使える良質のシャンプー剤をお客さまにすすめる義務があるのです。

  

5.  付記